『VIVANT』の中でも、視聴者に最も大きな衝撃を与えた場面の一つが、乃木憂助が別班の仲間を次々と銃撃したシーンです。
これまで共に任務を遂行してきた仲間を、まるで迷いなく撃ち倒した乃木。
「乃木は本当に別班を裏切ったの?」
「高田・和田・廣瀬・熊谷は死亡した?」
「黒須だけなぜ生きている?」
と疑問に思った人も多いでしょう。
しかし、この場面には乃木の狙撃能力や、それまでに張られていた伏線が深く関係しています。
結論から言えば、乃木は別班を裏切っていません。
仲間を撃ったのは、テントに潜入し、リーダーであるベキに近づくための極めて危険な「死亡偽装」だったのです。(オリコンニュース(ORICON NEWS))
乃木はなぜ仲間を撃ったのか?
まず重要なのが、乃木がテントの内部へ入り込もうとしていたことです。
乃木の父親であるベキは、テントのリーダー。
乃木にとってベキは、40年間生死すら分からなかった父親でもあります。
しかも乃木は、単純に父親に会いたかったわけではありません。
テントが何を目的として活動しているのか。
そして、日本に対して本当に脅威となる組織なのか。
その真相を自らの目で確かめる必要がありました。
そこで乃木が選んだのが、「別班を裏切った男」を演じることでした。
テント側から見れば、日本の特殊部隊である別班員を殺してまでテント側についた人物なら、信用する可能性があります。
逆に、仲間を撃つ演技が少しでも疑われれば、乃木自身が殺される危険がある。
だからこそ、乃木は本気で裏切ったように見える行動を取ったのです。(スポーツニッポン)
別班の4人は本当に死亡した?
ここが最大のポイントです。
乃木に撃たれたのは、
● 高田明敏
● 和田貢
● 廣瀬瑞稀
● 熊谷一輝
の4人。
第8話では、この4人が死亡したとされ、棺が運び出される描写まで登場しました。
そのため一時は「本当に死亡したのでは?」という衝撃が広がりました。
しかし、物語上の答えは4人とも生存です。
乃木は4人の急所を外して狙撃しており、死亡したように見せていたのです。
つまり、あの銃撃は「殺害」ではなく、テントを欺くための偽装でした。
当時から視聴者の間では「棺はダミーではないか」「乃木は本当に裏切っていないのではないか」という考察が広がっていました。(オリコンニュース(ORICON NEWS))
なぜ乃木には急所を外して撃てたのか?
ここで重要になるのが、乃木の特殊な能力です。
乃木は非常に高い射撃能力を持っています。
ただ撃つだけではありません。
相手のどこを狙えば致命傷にならないのかを瞬時に判断できるほどの能力を持っています。
だからこそ、仲間を「撃ったように見せながら生かす」という極めて難しい作戦が成立しました。
偶然助かったのではありません。
乃木が最初から「殺さない」ことを前提に撃っていたと考えるのが自然です。(ENCOUNT)
では、黒須はなぜ一緒に連れていかれた?
ここがさらに巧妙です。
4人はその場に残されましたが、黒須駿だけは乃木とともにテントへ連行されます。
黒須は乃木に撃たれ、負傷した状態でテント側に捕らえられました。
一見すると、
「黒須だけ本当に殺そうとしている?」
と思わせる展開です。
しかし、これも乃木の作戦でした。
黒須を連れていくことで、乃木が本当に別班を裏切ったように見せることができます。
しかも、黒須本人には作戦の全貌を知らせていない。
ここが乃木の怖いところです。
もし黒須が演技をしてしまえば、テント側に「偽装ではないか」と疑われる可能性があります。
だからこそ乃木は、黒須から見ても本気の裏切りに見える状況を作ったと考えられます。
乃木は仲間を信用していなかったのか?
ここは少し複雑です。
乃木は仲間を信用していなかったというより、仲間にも作戦を明かせないほど危険な潜入だったと考えられます。
もし別班員全員が「乃木は裏切ったふりをしている」と知っていれば、表情や行動のわずかな違和感からテント側に見破られる可能性があります。
つまり、
「仲間を守るために、仲間を騙す」
という矛盾した作戦だったのです。
乃木にとっては、別班員を死なせないことと、テントへの潜入を成功させること。
その両方を成立させる必要がありました。
乃木は本当に父・ベキを選んだのか?
ここも『VIVANT』の大きなミスリードです。
乃木はベキと再会したことで、父親への感情を強く見せます。
しかも、別班の仲間を撃った直後だったため、
「乃木は日本より父親を選んだのでは?」
と思わせる展開になっています。
しかし、乃木の目的は父親に会うことだけではありません。
むしろベキに近づくことで、テントの本当の目的を探ることが最大の目的でした。
乃木が父親への感情を利用しながらテントへ入り込んだことで、物語は「父と息子」という個人的なドラマと「日本を守る」という国家的な任務を重ねていきます。
乃木は別班の裏切り者ではない
ここまで整理すると、乃木の行動はかなり明確になります。
乃木が別班員を撃った
↓
別班を裏切ったように見せる
↓
テントから信用を得る
↓
ベキに近づく
↓
テントの目的を探る
↓
日本への脅威を阻止する
という流れです。
つまり、乃木が仲間を撃った最大の理由は「テントへの潜入」。
そして、そのために必要だったのが「本物の裏切り者に見えること」だったのです。(DramaWaves)
それでも乃木の行動が「怖い」と感じる理由
このシーンが単純なヒーロー展開になっていないのは、乃木が仲間を守るために、仲間からも裏切り者と思われる道を選んだからです。
普通なら、
「実は作戦でした」
と仲間に伝えて協力してもらいたくなるでしょう。
しかし乃木は、それをしませんでした。
結果的に仲間は撃たれ、黒須には本気で恨まれることになります。
つまり乃木は、
「自分が嫌われても、疑われても、任務を成功させる」
という道を選んだのです。
そこに乃木という人物の孤独があります。
そして、乃木の中に存在する「F」の存在も、この極端な合理性や危機的状況での判断を考えるうえで重要な要素になっています。
まとめ|乃木が仲間を撃った本当の理由
『VIVANT』で乃木が別班の仲間を撃ったのは、単純な裏切りではありません。
乃木は別班を裏切っていません。
仲間を撃ったのは、テントに潜入するために「別班を裏切った」と信じ込ませる必要があったからです。
そして高田・和田・廣瀬・熊谷の4人は、乃木が急所を外して撃ったことで生存。
黒須についても、乃木が本当に殺そうとしたわけではなく、テント側に「本物の裏切り」と信じさせるための重要な存在でした。
この一連の展開で特に面白いのは、乃木が敵を欺くだけではなく、味方さえも欺いていたことです。
だからこそ第7話の「仲間への銃撃」は、乃木が裏切った瞬間ではなく、むしろ乃木が最も危険な潜入作戦へ踏み込んだ瞬間だったと言えるでしょう。
『VIVANT』は「誰が味方で誰が敵なのか」を何度も反転させる作品ですが、乃木の銃撃シーンはその象徴ともいえる場面です。


