『Tシャツが乾くまで』第8話で、物語の中心にあった「充とあずさの秘密」から、少しずつ視点が変わり始めました。
今回、特に印象的だったのが、充が咲子の行方を探すだけではなく、周囲の人たちに「自分の知らない咲子について教えてほしい」と尋ねたことです。
そこで浮かび上がったのは、充が10年間一緒に暮らしてきた咲子とは、少し違う人物像でした。
さらにラストでは、咲子が海辺の街へ向かい、篤彦と子どもたちと思われる2人と再会。
咲子は充の前では見せなかったような、自然な笑顔を見せていました。(realsound.jp)
果たして、私たちがこれまで見てきた咲子は「本当の咲子」だったのでしょうか。
ここからは第8話から見えてきた、咲子の本当の人物像を考察します。
第8話で浮かび上がった「充の知らない咲子」
第8話で充は、咲子を探すために樹生、千鶴、宮内、直人らに話を聞きます。
しかし、そこで語られた咲子の人物像は一つではありませんでした。
母親から見れば、思慮深く優しい女性。
直人から見れば、明るく前向きな女性。
千鶴が知っている結婚前の咲子は、飽き性で新しいものが好きで、切り替えの早い女性。
つまり、同じ咲子なのに、相手によって印象が違っていたのです。
そして充は、その違いに戸惑います。
自分が10年間一緒にいた妻なのだから、誰よりも咲子を理解している。
おそらく充は、そう思っていたのではないでしょうか。
ところが実際には、周囲の人たちが知っている咲子の中に、充が知らない一面がいくつも存在していました。第9話の公式あらすじでも、この「充と出会う前の咲子」と現在の咲子の違いが重要なポイントとして示されています。(tbs.co.jp)
咲子は「別の顔」を演じていたのか?
ここで気になるのが、
「咲子は充の前で別人を演じていたのでは?」
ということです。
しかし、私は少し違うのではないかと思います。
咲子は嘘をついていたのではなく、相手によって違う自分が出ていただけなのではないでしょうか。
人間は誰でも、家族の前、友人の前、職場の前、恋人の前で少しずつ違う顔を持っています。
明るい人が家では無口だったり、しっかりしている人が親しい友人の前では甘えたりする。
そのすべてが、その人自身です。
だから、
「母親が知っている咲子」
「千鶴が知っている咲子」
「直人が知っている咲子」
「充が知っている咲子」
のどれか一つが本物で、ほかが偽物というわけではないのだと思います。
むしろ第8話で描かれたのは、一人の人間を、夫婦だからといって完全に理解できるわけではないということなのではないでしょうか。
実は「充と咲子」の立場が逆転している?
ここが第8話で一番面白いところです。
第7話まで、咲子は「充には自分の知らない一面がある」と知って傷つきました。
自分は充の妻なのに、あずさのほうが充の本音を知っていた。
それは咲子にとって、とても大きなショックだったはずです。
ところが第8話では、今度は充が同じ立場に置かれています。
「自分は咲子のことを知っている」と思っていた。
でも、周囲に聞いてみると、自分の知らない咲子が次々に出てくる。
つまり、
第7話では咲子が「夫を知らなかった」ことに傷つき、第8話では充が「妻を知らなかった」ことに気づく。
この構造になっているように見えます。
夫婦だから相手を一番理解しているとは限らない。
むしろ、近すぎるからこそ見えなくなっている部分がある。
第8話は、そんな夫婦の距離感を描いた回だったのではないでしょうか。
咲子は「優しい女性」だけではなかった?
これまでの咲子は、かなり優しい女性として描かれてきました。
充の気持ちを考え、相手の事情を理解しようとする。
自分が傷ついても、すぐに相手を責めるのではなく、相手の立場を考える。
そんな姿が多く描かれていました。
しかし、第8話では少し違います。
咲子は傷つき、家を飛び出しました。
そして、周囲の人たちには自分が無事であることを伝えながら、充には直接知らせませんでした。
これは、これまでの「何でも受け止める咲子」とは少し違います。
でも、だからこそ私はこの咲子のほうが「人間らしい」と感じます。
怒ることもある。
嫉妬することもある。
傷つくこともある。
誰かから離れたいと思うこともある。
それでもおかしくありません。
もしかすると、これまでの咲子は「優しい人」だったというより、優しくあろうとしてきた人だったのではないでしょうか。
「夫には黙っていて」が意味するもの
さらに重要なのが、咲子が周囲の人たちに連絡をしながら、充にはそのことを伝えないようにしていたことです。
ここには咲子の意志が感じられます。
単純に充を困らせたいわけではなく、
「今は充から離れたい」
という気持ちがあったのではないでしょうか。
これまでの咲子なら、充が心配することを考えて、自分の気持ちを抑えていたかもしれません。
しかし今回は違いました。
自分がどうしたいのかを優先した。
つまり、第8話の咲子は「誰かの妻」から少し離れて、一人の女性として自分自身を取り戻そうとしているようにも見えます。
海辺で見せた咲子の笑顔が意味するもの
そして最後に登場した篤彦と子どもたち。
ここはかなり気になります。
咲子は海辺の街で、まるで別人のように自然な笑顔を見せています。
充の前で見せていた「妻としての咲子」とは違う。
そこには、過去の咲子を知る人物がいる可能性があります。
ただし、篤彦が咲子にとってどんな人物なのかは、現時点ではまだ明らかになっていません。
公式でも、篤彦は海辺の街で暮らす男性として登場し、子どもたちとの関係も「子どもたちと思われる」とされている段階です。(tbs.co.jp)
だからこそ、
「元恋人なのか?」
「家族なのか?」
「昔からの友人なのか?」
と、さまざまな可能性が考えられます。
ただ、一つ確かなのは、篤彦たちの前にいる咲子は、充が知らない過去とつながっている可能性が高いということです。
「本当の咲子」は一人ではない?
第8話を見て、私は「本当の咲子」という答え自体が存在しないのではないかと思いました。
充が知る咲子も本物。
千鶴が知る咲子も本物。
母親が知る咲子も本物。
そして、篤彦や子どもたちの前で見せる咲子も本物。
つまり、咲子は一つの顔を持つ女性ではない。
その時々の環境や相手によって、さまざまな自分が存在している。
それは決して「裏表がある」という意味ではありません。
むしろ、人間なら誰でも持っている複雑さです。
そして充が今向き合わなければならないのは、
「咲子はどんな人なのか?」
という答えではなく、
「自分の知らない咲子がいても、なお彼女と向き合えるのか?」
という問いなのかもしれません。
第9話では「過去の咲子」が大きな鍵に?
第9話では、咲子が篤彦と子どもたちのもとで過ごす一方、充たちは再び咲子の人物像について話し合います。
そこで、千鶴が語る「飽き性で新しい物好き、切り替えが早い」という結婚前の咲子と、充が知っている現在の咲子との違いがさらに浮き彫りになります。
そして公式あらすじでは、咲子が抱えていた「大きな秘密」が明かされると予告されています。(tbs.co.jp)
ここから考えると、第8話で描かれた「咲子の人物像のズレ」は、第9話以降で回収されるための重要な伏線なのではないでしょうか。
これまで私たちが見てきた咲子は、結婚してからの咲子。
これから明らかになるのは、充と出会う前の咲子。
そして、その過去と篤彦がつながっている可能性があります。
まとめ|咲子の「本当の顔」は、優しさの裏側にあった?
第8話で見えてきたのは、咲子が「別人を演じていた」ということではないと思います。
むしろ、
咲子には、充が知らない自分が存在していた。
それだけなのではないでしょうか。
優しい咲子。
明るい咲子。
飽き性で新しいものが好きな咲子。
傷ついて怒る咲子。
誰かから離れたいと思う咲子。
そして海辺で笑う咲子。
その全部が、咲子なのかもしれません。
第7話では、咲子が「自分は充を一番理解している」と思っていた関係が崩れました。
そして第8話では、充自身が「自分は咲子を一番理解している」という思い込みを崩されました。
だからこそ、ここから本当の意味で二人が向き合えるのかもしれません。
そして、その鍵を握っているのが篤彦と、咲子がこれまで語らなかった過去。
第9話で明かされる「大きな秘密」が、咲子という女性の見え方を大きく変えることになりそうです。



