『Tシャツが乾くまで』第7話では、これまで少し謎に包まれていた「あずさ」という女性の人物像が、かなりはっきり見えてきました。
あずさと充の関係を振り返ると、最初に距離を縮めたのは、明らかにあずさのほうです。
充は最初からあずさを積極的に求めていたわけではありません。
むしろ、ごく普通に接していた充のところへ、あずさがグイグイと入り込んでいきました。
ところが、その距離感に最初は戸惑っていたはずの充も、少しずつあずさと一緒にいることを心地よく感じるようになっていきます。
第7話は、そんな2人の関係がどのように始まり、なぜ充が怖くなっていったのかが見えてくる重要な回だったのではないでしょうか。
あずさから充へのアプローチだった
まず注目したいのは、充とあずさの関係の始まりです。
初対面のとき、充は特別なことをしていたわけではありません。
至って普通の行動をしていた充に対して、距離を縮めていったのがあずさでした。
あずさは相手の様子を見ながら少しずつ近づくというより、自分から相手の懐に入っていくタイプに見えます。
言い換えれば、相手の心に「土足で入り込む」ような積極性を持った女性です。
普通なら、
「ここまで近づいたら嫌がられるかな」
と一度考えるようなところでも、あずさはあまり躊躇しません。
それがあずさの魅力でもあり、危うさでもあります。
最初は戸惑っていた充も、徐々に心地よくなる
もちろん、充が最初からあずさを好きだったわけではないでしょう。
むしろ、突然距離を縮めてくるあずさに戸惑っていたようにも見えます。
しかし、人間関係は不思議なものです。
最初は少し鬱陶しいと感じていた相手でも、頻繁に会うようになったり、自分に好意を向けてくれたりすると、次第にその存在が当たり前になっていきます。
そして、いつの間にか「一緒にいると楽しい」「一緒にいると落ち着く」という感情に変わっていく。
充とあずさの関係も、まさにそうだったのではないでしょうか。
あずさが積極的に距離を縮めたことで、充の中にも少しずつあずさへの感情が生まれていったように見えます。
長野に行った日も、あずさは突然現れた
それが象徴的だったのが、長野に行った日の出来事です。
充とあずさは、あらかじめ明確な約束をしていたわけではありません。
それなのに、充がバスに乗る前に目の前に現れたのはあずさでした。
この場面からも、あずさが自分から充との接点を作っていたことが分かります。
そして、その後の展開では、咲子や樹生に対して嘘をつくことになります。
ここで重要なのは、充とあずさの関係が、いつの間にか「隠さなければならないもの」になっていたことです。
最初は何気ない接点だったはずなのに、気づけば2人の間には、咲子に対して言えないことが生まれていた。
この変化が、2人の関係の危うさを表しています。
「怖くなった」のはあずさではなく充
第7話で特に重要なのは、ここだと思います。
怖くなったのは、あずさではありません。
怖くなったのは充です。
あずさは、最初から「誰かを傷つけてやろう」と考えていたわけではないでしょう。
充が好き。
一緒にいたい。
だから近づく。
それだけだったようにも見えます。
一方、充はあずさとの距離が近くなり、自分自身の気持ちに気づいてしまった。
あずさと一緒にいることが心地いい。
あずさに惹かれている。
でも、自分には咲子がいる。
その矛盾に気づいたことで、充は怖くなったのではないでしょうか。
つまり、
「あずさが怖い」のではなく、「あずさに惹かれてしまった自分が怖い」
ということです。
ここは、あずさという人物を考えるうえで非常に重要なポイントだと思います。
あずさは「奪っている」という自覚が薄い?
あずさの行動を見ていると、彼女には「充を奪っている」という意識がそれほど強くないようにも感じます。
もちろん、結果的には咲子との関係に入り込んでいるわけですが、あずさ自身は計算して充を追い詰めているようには見えません。
むしろ、
「充が好きだから近づく」
という非常に素直な女性なのではないでしょうか。
だからこそ、あずさは悪女として単純に片付けられない。
自分の気持ちに正直である一方、その正直さによって誰かを傷つける可能性については、あまり深く考えない。
そこに、あずさの危うさがあります。
優しい男性ほど、グイグイ来る女性に惹かれることもある
充の側にも、もちろん責任があります。
咲子がいる以上、あずさとの距離をどこかで止めることはできたはずです。
それでも充は、あずさを完全には拒絶しませんでした。
ここには、優しい男性と積極的な女性の恋愛にありがちな構図が見える気がします。
自分から女性を追いかけるタイプではない男性の前に、積極的に好意を示してくれる女性が現れる。
最初は戸惑っていても、
「自分を必要としてくれる」
「自分と一緒にいたいと思ってくれる」
という感覚が心地よくなってしまう。
充も、そうやって少しずつあずさに惹かれていったのかもしれません。
ドラマではおしゃれ。でも現実にいたら?
『Tシャツが乾くまで』では、充とあずさの距離が縮まっていく様子が、おしゃれで繊細に描かれています。
映像として見ると、とても雰囲気があります。
しかし、これを現実の恋愛に置き換えると、少し印象が変わるかもしれません。
もし身近に、
「ちょっとタイプだな」
と思った男性にどんどん近づき、相手の反応を見ながら距離を縮めていく女性がいたら、周囲からは「かなり肉食系だな」と思われるでしょう。
しかも相手にパートナーがいると分かっている場合、
「そこまで入っていく?」
と感じる人もいるはずです。
ドラマの中では美しく見えるあずさの行動も、現実世界で見ると、かなり強引に感じる可能性があります。
あずさタイプは「嫌われる」というより、長く付き合う人が少ない?
あずさのようなタイプは、必ずしも最初から嫌われる女性ではないと思います。
むしろ最初は、
「明るい」
「積極的」
「話しやすい」
「一緒にいると楽しい」
と思われるタイプかもしれません。
ただし、問題は長く付き合ったときです。
相手との距離感を考えず、自分のペースでどんどん踏み込んでしまうと、周囲が疲れてしまう。
そのため、
「嫌われる女性」というより、「長く付き合ってくれる人が少なくなりやすい女性」
なのではないかと思います。
同性の友人は少ないタイプにも見える
ここも、あくまで人物像からの考察です。
あずさのように、自分の感情に素直で、欲しいものに対して積極的に動く女性は、男性から見ると魅力的に映ることがあります。
一方で、女性同士の関係では、
「距離が近すぎる」
「人の領域に入りすぎる」
と感じられることもあります。
特に、友人が好意を持っている男性に近づいたり、恋人がいる男性との距離を縮めたりすれば、同性からの信頼を失う可能性もある。
その意味では、あずさは男性との距離を縮めるのは得意でも、同性との深い友情を作ることには不器用なタイプなのかもしれません。
学校にいたら「ちょっと苦手」と思われる女子?
さらに現実に置き換えてみると、あずさは学校にいたら、女子から少し警戒されるタイプにも見えます。
男子には積極的。
好きな人には一直線。
人との距離が近い。
そして、自分が楽しいと思ったことには素直に突っ込んでいく。
そんな女性なら、女子の中には、
「またあの子やってる」
と思う人もいるかもしれません。
場合によっては、女子グループから距離を置かれたり、陰で何か言われたりするタイプにも見えます。
ただし、これも「あずさが悪い人」という意味ではありません。
むしろ、本人にはそこまで悪気がないからこそ、周囲との温度差が生まれてしまうのではないでしょうか。
あずさは「自分の欲しいものを取りに行く女性」
ここまで考えると、あずさの人物像はかなりはっきりしてきます。
あずさは、
「自分が欲しいものに対して、とても素直な女性」
なのだと思います。
充が気になる。
だから近づく。
充と一緒にいたい。
だから会いに行く。
充との時間が心地いい。
だから、さらに距離を縮める。
とてもシンプルです。
だからこそ、あずさには「悪意」があまり感じられない。
しかし、その素直さが、結果的に誰かを傷つけることがあります。
そして今回、そのことに気づき始めたのが充だったのではないでしょうか。
あずさは悪女なのか?
第7話までを見る限り、私はあずさを完全な「悪女」とは思いません。
ただ、恋愛においてはかなり危ういタイプだと思います。
自分の気持ちに正直。
欲しいものには自分から手を伸ばす。
相手との距離を縮めることを恐れない。
その一方で、その先に誰かの傷つきがあることを深く考えない部分がある。
だから、あずさ本人には悪気がなくても、結果的に周囲の人間関係を壊してしまう可能性があります。
そして何より面白いのは、そんなあずさに惹かれてしまった充自身も、決して被害者ではないということです。
あずさが一方的に近づいた。
充は最初こそ戸惑った。
でも、少しずつその距離を受け入れていった。
そして気づけば、あずさといることが心地よくなっていた。
だからこそ充は怖くなった。
あずさが怖いのではなく、あずさに惹かれてしまった自分が怖かった。
第7話では、そんな充の気持ちが見えてきたように思います。
あずさは単なる「恋敵」ではありません。
自分の感情に素直に動いた女性と、その女性を受け入れてしまった男性。
そして、その2人の間にいる咲子。
『Tシャツが乾くまで』が面白いのは、誰か一人を完全な悪者にできないところなのかもしれません。
今後、あずさが自分の気持ちをどこまで貫くのか。
そして充が、自分の中に生まれたあずさへの感情とどう向き合うのか。
第8話以降は、そこが大きなポイントになりそうです。



